メモアプリのセキュリティは、暗号化より先に「保存場所」を確認する
いま使っているメモアプリに何が入っているか、少し思い出してみてください。
口座番号の下4桁、病院で言われたこと、転職の迷い、家族の名前と誕生日、ログインのヒント。大した機密ではなくても、他人に読まれると困るものが混ざっているはずです。
ではひとつだけ質問します。そのメモの原本は、いまどこにありますか?
多くの方は正確に答えられません。「クラウドのどこか」くらいが普通です。そして実は、この質問こそがメモアプリのセキュリティで最も重要な問いです。暗号化の有無よりも先に来ます。
先に結論をお伝えします。確認することは3つです。
- メモの原本が保存されている場所
- その場所の鍵を誰が持っているか
- ログイン情報がどこに残るか
「暗号化しています」は思ったより弱い約束です
通信の暗号化は特長ではありません
紹介ページで「通信を暗号化しています」「SSLで保護」といった文言をよく見かけます。
これは実のところ標準装備です。いまのウェブサイトならほぼ全部そうしています。この一文が保証しているのは、メモがインターネットを渡っている間は盗み見されにくい、ということだけです。
渡ったあと、到着先でどんな状態で置かれているかについては何も語っていません。
本当の問いは「鍵を誰が持っているか」です
「サーバー保存時も暗号化しています」という表現も一般的です。ただ、もう一段踏み込むとこう分かれます。
- 会社が鍵を持つ暗号化 — 必要なときにサーバー側でメモを開けます。検索やプレビュー機能を提供するなら、たいていこの方式になります。
- 自分だけが鍵を持つ暗号化 — 会社にも開けません。その代わりパスワードを失うと復旧できません。
前者が悪いという話ではありません。ただしこの場合、「暗号化しています」は「見ないと約束します」に近いということです。技術的な保証ではなく方針上の約束です。方針が変われば、買収されれば、サーバーが破られれば、約束は揺らぎます。
メモアプリのセキュリティ確認、3つのポイント
1. 原本の場所を確かめる
いちばん確実な見分け方はこれです。アプリを削除しても、メモを読めますか?
- 読めない → 原本はその会社のサーバーにあります。
- 読める → 原本は自分の保管先(自分の端末や自分のクラウド)にあります。
原本が自分の側にあれば、その会社で事故が起きても自分のメモは影響を受けません。そもそもそこに無いからです。
2. 規約で2つの言葉を検索する
プライバシーポリシーを全部読む必要はありません。Ctrl+F を押して、2語だけ探してみてください。
- 「コンテンツ」または「ユーザーが作成した」 — 自分が書いたものを、会社がどんな目的で扱えると書かれているか。
- 「第三者」 — どこへ渡りうるか。
最近はAIの学習に関する条項が加わっていることも多いです。たいていは拒否する設定がありますが、初期値がどちらかは確認しておく価値があります。
3. ログイン情報がどこに残るかを見る
ここは見落とされがちですが、実際の漏えい事故で問題になる箇所です。
メモアプリが自分のクラウドにアクセスするにはアクセストークンが必要です。このトークンを会社のデータベースに保管する方式なら、そのデータベースがひとつ破られただけで、全ユーザーのクラウドへのアクセス権がまとめて渡ります。
メモ本文を保存していなくても、トークンを持っていれば結果はさほど変わりません。
いちばん確実なセキュリティは「そもそも持たないこと」
漏えい事故のニュースは、いつも同じ形をしています。一か所に集めたデータが、まとめて出ていきます。
だから最も単純で確実な防御は、暗号化を強くすることではなく、集めないことです。サーバーに無いデータは、サーバーから漏れません。
そのためには、構造がこうなっている必要があります。
- メモの原本は自分のクラウドに保存される
- アプリは自分のブラウザで動き、そのクラウドと直接やり取りする
- 会社のサーバーはその間に入らない
Fenex はこの構造を選びました
Fenexが作られた理由が、まさにこれです。
メモは自分の Google ドライブに .md ファイルとして保存されます。 Fenex のサーバーに複製は残りません。文章はブラウザと自分のドライブの間だけを行き来します。
ログイントークンすらサーバーに置きません。 トークンは暗号化してブラウザのCookieに返します。ユーザーデータベースと呼べるものがありません。漏れるデータが集まっていない構造です。
接続はいつでも自分の手で切れます。 Googleアカウント設定の「サードパーティ アプリ」から権限を取り消せば、その場でアクセスが切れます。それでもメモのファイルは自分のドライブに残ります。 消えるのは接続だけです。
言い換えると Fenex は、メモを守ると約束する代わりに、最初から持たないことにしたアプリです。
まとめ
メモアプリのセキュリティは、この順で確認すれば十分です。
| 確認すること | 確認方法 |
|---|---|
| 原本の保存場所 | アプリを消してもメモを読めるか |
| 鍵を持つ人 | 規約で「コンテンツ」「第三者」を検索 |
| ログイントークン | サーバーに保管か、ブラウザに置くか |
「安全に守ります」という約束より、「そもそも持っていません」という構造のほうが常に強いです。約束は変わりますが、構造はなかなか変わりません。
いま使っているアプリを確かめてみて、原本を自分の手元に戻したくなったら、Fenexを開いて最初のメモを書いてみてください。インストールも会員登録も不要です。
もっと基本的なところから読みたい方は、Google ドライブに Markdown でノートを書くを先にどうぞ。